ここで言う土とは，農林業での土壌とは違って，地盤工学的立場から，粘土・砂・礫・風化岩・有機質土を含むものとします。土は，土粒子によって構成される「骨格」とその間隙を占める水および気体（ふつうは空気と水蒸気）から成っています。したがって，土は単なる固体でない「粒状体」として，つぎの特徴をもっています。

• 粒子間隙が連続しているので，多かれ少なかれ透水性がある。
• 骨格と間隙水が力を分担する。
• 骨格の形を変えようとすると，条件によって，体積が収縮したり膨張したりする。

粒子の大きさによる土の分類
　粒子の大きさの小さい順に，粘土（5ミクロン以下），シルト（5〜75ミクロン），砂（75ミクロン〜2 mm），礫（れき）となります。粘土およびシルトの一部は粘り気があるので，「粘性土」と呼ばれます。

地層の種類
　堆積年代の若い順に，埋立て層，沖積層，洪積層，第三紀層などがあります。さらに古い地層は硬い岩盤なので，ふつうは建築基礎のトラブルとは関係がありません。

• 埋立て層：埋立ては，江戸時代初期の日比谷入江の埋立てを初め，その後も隅田川左岸の河口付近の砂州や干潟を利用し，水路の開削土・浚渫土・火事跡の瓦礫・ごみの処分をかねた「築地」として盛んに行われたようで，現在の東京都江東区の一部（永代島，門前仲町，木場，越中島など）はその結果できた「新田」だったようです。近年は，ゴミ処分を目的とした埋立ての他，土を使った大規模な人工島が増えています。埋立て層は材料によって性質がまちまちですが，ごみの場合は沈下，砂の場合は液状化が問題となります。
  沖積層：沖積という言葉は，「沖積世」という約18,000±3,000年以降の地質時代を表わす場合と，河川の堆積作用という成因的分類を表わす場合があり，地域によっても定義が異なるようです。いずれにしても，地盤工学的には軟弱地盤として，つぎに述べる洪積層と対比されます。
  洪積層：約200〜2万年前の氷期に堆積した地層で，沖積層より安定していますが，飛び離れて強いとは限らず，大きな荷重を載せれば相当な沈下をする洪積粘土があることは，関西空港でも実証されています。地盤工学的には，強いて沖積層と区別するよりも，強度や硬さを実測することのほうが重要です。

表層地盤
　軟弱地盤は，埋立て層と沖積層を含み，地表面近くにあって地下水が浅いことが多いのです。高有機質土は「超軟弱地盤」と言えます。表層地盤を構成する主な土の成因などを下表に示します。間隙率とは，土全体の体積に対する土粒子以外の間隙の体積の比率で，砂以外では70％以上の大きな値になっています。間隙の大部分は水なので，脱水すると収縮します。苗木を植えるために穴を掘ってから，しばらくして埋め戻すと，根の体積の分だけ穴が小さくなったはずなのに，土が足りなくなるのは，脱水収縮のためです。

^*関東ロームは火山灰質粘性土の代表例です。

吉見吉昭：『地盤と建築構造のはなし』，技報堂出版，2006

地盤と建築基礎