爆弾テロが無く，ライフル乱射事件もほとんど無いわが国でも，地震や土砂災害のリスクは常に存在し，無差別に通行人を殺傷する通り魔とか，駅のホームから他人を線路に突き落とすなどという，常人の理解を超えた事件が起こったり，建築現場の足場から鉄パイプが降ってきたりしています。時代劇に出てくる武芸の達人なら，とっさに身をかわして事なきを得るでしょうが，われわれにはとても出来ません。一方「安物買いは銭失い」，「安かろう悪かろう」などという諺がありますが，銭どころか命さえ失いかねない安物の代表格は格安の深夜バスで，規制緩和 → 小規模業者の乱立 → 過当競争の先には安全の軽視というリスクがありますので，安物を疑うという用心深さも必要です。どうしても乗りたいのであれば，シートベルトの着用は最低限のマストです。

　事故は想定外なことが多いので，完全な防止策はありません。しかし被害に遭う確率を減らすことはある程度可能なので，通り魔以外について，武芸の心得がなくても出来るいくつかの方法を思いつくままに並べてみます。

• 歩道の無い道路では「車は左，人は右」を守り，近くを走る車を視野に入れておけるように道の右端を歩く。肩を並べて歩くのは論外。

• ロンドンの一方通行の道路で見かけた横断歩道

  右側通行の国に行ったら頭を切り替えて，先ず左を見てから車道を横断するようにする。逆のケースとして，私の知人の小学生の息子さんは右側通行の国から帰国して間もなく，左を見ながら車道を横断しようとして右から来た車にはねられて亡くなりました。一方通行の道が増えたことに対応しているかもしれませんが，ロンドンでは右の写真のように，車の来る方向に注意するように，横断歩道の手前に LOOK RIGHT→ または ←LOOK LEFT と書いてあります。（逆行してくる車は絶対無いという前提でしょうが。）
• ひったくりの被害を避けるため，歩道の有無にかかわらず道路の中央と反対側に荷物を持つ。
• 歩行者用信号が青に変わった瞬間に脇目も振らず歩くと，信号無視の車にはねられるので，信号を過信せず自分の目と耳で安全を確認し，とくに運転者が余所見をしていたら絶対に車の前に出ない。
• 周りに人がいるときは，駅のホームの端に立たない。
• 衝突の衝撃が最大となる電車の先頭と後尾の車両に乗らない。
• 強震に備えて家具を固定し，停電とガラス破片の対策として枕元に懐中電灯とスリッパを常備する。
• 屋外で強い地震を感じたらブロック塀や石灯籠から素早く離れる。
• 工事中の建設現場に近寄らない。どうしても近寄る必要があれば，落下物に備えて常に頭上を監視する。

　「確率の低いことは心配しない。」というのも立派な見識です。しかしこんな面倒なことは嫌だとおっしゃる方は，万一災難に見舞われることがあっても，「運が悪かったのだ。」とあっさり諦め，泣き言を一切言わないことです。